こんにちは、スタッフの川眞田です。
せめて週1回はブログを更新しよう!と思っているのですが、
書いているうちに自分が頭の中で雑多に考えていたことが少しずつまとまる感覚があって、
書く効果って本当にあるんだなぁと実感しています。
今年の春に一期生となる生徒さんたちを送り出した際、
松尾塾では生徒さんたちの進学先やその人数を一般公開しない、という方針を決めました。
(生徒さんやその保護者の方からの問い合わせがあればお伝えしています。)
ここでこれを読んでくださっているみなさんに強くお伝えしたいことは、
公開することが悪いことだとか、間違っていることだと思ってそのように決定したのではない、ということです。双方にメリットデメリットがあり、ただそれぞれの塾の方針で決めれば良いだけのことで、
松尾塾では公開しない方針にした、それだけのことです。
本題に戻って、なぜ公開しないことを選んだのか。
それは、数字とか学校名の影に隠れて、一人ひとりの生徒さんの人生が見えなくなることが
松尾塾のカラーとは違うと感じたからです。
『◯◯大学に10人合格!』。 この表現には本当に何も問題はないんです、ないんですけど、
これだとなんだか「◯◯大学」に合格した「10人」のひとかたまりに過ぎないように思えてきてしまって。
でも、私たちは「◯◯大学」に合格した生徒さん、その「ひとり」が合格した人生が10コあったと捉えたい。
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話がそれますが、私は小学校から高校まで地元の公立に通い、
大学は「自宅から通える国公立」という条件の元で 選んだ国立大学に入学しました。
その間、塾に通ったことは一度もありません。
理由は簡単で、家庭の経済的な理由で塾に通うことができなかったから。
実際、大学の費用や寮費もバイトをしたり奨学金などを借りながらなんとかかんとか通っていました。
大学には様々な人がいて、私と同じような境遇で日々学費のためのバイトに奔走している人、
経済的に豊かな家庭に生まれ、広くて新しいマンションに住んで高級車に乗っている人、
「日本の一般的な家庭に生まれた一般的な学生」のイメージそのものの「普通(に見える)」人。
経済面以外でも、別の本命に受からなくて仕方なくその大学に来ている人や、
もっとレベルの高い大学を目指せたけれど行かなかった人、塾に通い詰め必死に頑張って入った人。
同じ学校にいて同じように学んでいるのに、そこに至るまでの道のりはみんなバラバラでした。
その大学に入るため、通い続けるための労力も全く違う。
恥ずかしながら、当時の私は悲劇のヒロイン気取りで自分の不遇を大袈裟に嘆いていましたが、
周りの人の人生の話を聞いて、「私の苦労はありふれたものかもしれない」と思うようになりました。
それくらい、人の人生には果てしなくバリエーションがある。
それでも、その大学の学生は一歩外に出れば同じ「◯◯大学生」です。
こんなにも違っていて、ひとまとめにすることなんて不可能なのに。
中には『◯◯大学に△人合格!』と張り出しされていた中のひとりだった人もいたかもしれません。
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一人ひとりの環境が違うのは当然のことです。
ただ、スタートラインが違う人たちが一斉に競争している点でその競争は平等だとは言えないわけで、
それにも関わらず結果だけは同じ土俵で比較するなんて、本当にセンスがないことだと私は思います。
その人の学歴や学校名なんかの「くっついているもの」だけでその人を判断するのも、
とても貧しい発想だと感じてしまいます。
「くっついているもの」も大切、でもそれはその人の部分であって全体ではない。
人間はもっと奥行きがあって、層が厚くて、多面的なものなのではないでしょうか。
だから、せめて私たちが関わった生徒さんについては、結果や見えることだけではなくて、
そこに至るまでの背景をしっかり理解していたいし、理解した上でその結果を讃えたいと思っています。
ひとり一人の背景や目標をしっかり把握して、その可能性を最大限拡大したいという考えで塾を作った私たちの、
小さいけれど譲れないこだわりです。
塾選びをする際に合格実績を参考に選ばれる方も多いはずでご不便をおかけしているとは思うので、
その点では非常に申し訳なく思っています。
ただ、合格実績の取り扱いについては、偏屈でちょっときれいごとのようにも見えるかもしれないけど、
松尾塾の方針が如実に出ている部分だと思うので改めて考えをまとめてみました。
面倒なことをいろいろ書いてきましたが、
要するに生徒さんを十把一絡げにしないでひとりの人間としてきちんと尊重したいし、
そのために授業や進路指導などの関わりは生徒さんごとに日々試行錯誤していく、
そういう私たちのこだわりをお伝えしたかったというのが今回のブログの趣旨でした。
それゆえ、一見するとちょっと変わった塾に見えることもあるようですが(笑)、
そんな塾がひとつくらいあったっていいよねと思っています。